「Falling」作 揚村 甜記(鏡読み)

 

あと申し送れましたがこの作品は一応フィクションです。実際にこんなこともこんな名前もありません……きっと

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登場人物

綾小路 清明(アヤノコウジ セイメイ)……主人公かな?ヒタスラ、マイペース

ミカエル               ……かつての最終戦争で名を残した天使、だとおもう

大宮 灯(オオミヤ アカリ)    ……綾小路の馴染?かな……。(女です)

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備考

ミカエルには羽を生やしてください

―――――――――――

 

 

 

 

「Falling」 作 揚村 甜記

 

ミカエルにスポットが当たる

携帯電話で誰かと話している様子だ

 

ミカエル はい、それでは今日の仕事は彼を始末することなんですね。

     はい、分かりました。

     いえ、そのようなことはありません。

     はい、はい。

     分かりました、それでは

     ――――すべては神の御心のままに。

 

ミカエル電話を切る

 

ミカエル ……神の御心か、あの時も………いや今はそんなこと考えていられないな。

     まずは仕事が先だ。

     ―――心残り……ありすぎだな

 

綾小路が自室に帰ってくる。

そこに何故かミカエルがいる。

部屋の隅には妙な鞄

綾小路は全く気にしない。

というか、居て同然のような顔をしている。

 

ミカエル よう、邪魔してるぞ。

綾小路  ああ、そう(鞄を下ろす)

・・・・・・。

ミカエル なあ

綾小路  なんだ

ミカエル こんなところに見ず知らずの奴がいてなにも気にしないのか?

綾小路  ああ

ミカエル 気にしろぉぉおお!!!!

綾小路  ンなこと気にしてどうする

ミカエル せめて名前ぐらい聞けよ

綾小路  じゃあ誰?

ミカエル(がく)もっとこう……聞き方ってもんがあるだろう

綾小路  早く名乗れ

ミカエル ふっ、聞いて驚くな、俺の名は、俺の名は―――

綾小路  引っ張るな、早く名乗れ

ミカエル もう少し、場の雰囲気を―――

綾小路  名乗れ

ミカエル ……いじめだよ……これっていじめだよ……

綾小路  いじめてないから、早く名乗れ

ミカエル は!イキナリ天使軍最高指揮官であるこの俺をここまで追い詰めるとはお前ただ者じゃないな

綾小路  ただも何も俺は綾小路 清明だ、さあ早く名乗れ

ミカエル もう貴様には名乗らん

綾小路  そう、じゃあいい(テーブルに勉強道具を広げる)

ミカエル ちょっとぉ聞いてくれよ、俺の名前聞いてくれよ

綾小路  じゃあ名乗れ

ミカエル だから、もう少し場の雰囲気を―――

綾小路  名乗れ

ミカエル ……

綾小路  早く名乗れ

ミカエル だぁぁ、貴様は本当に名乗らせる気が―――

綾小路  ツベコベ言わず早く名乗れ

 

ミカエル切れて一蹴り 

 

ミカエル 俺の名は天使軍最高指揮官、そしてアークエンジェルの指導者ミカエルだ

     そのほかには慈愛の天使、聖別の天使、正義の天使、神の御前のプリンス――

綾小路  そう(勉強道具を広げる)

ミカエル もうちょっと驚いてくれぇぇぇぇぇええええ!!

綾小路  で、何しに来たんだ

ミカエル ……なんでこの俺が派遣されたのか判った気がした

綾小路  分かったのはいいから、何しに来たんだ?

ミカエル 聞いて驚くな、俺は、俺は―――

綾小路  いちいち引っ張るな、早く言え

ミカエル 貴様はいつもそんな性格なのか?

綾小路  ンなことはどうでもいい。で、何しに来たんだ

ミカエル ふ、俺の役職はいくつもあってな天使長に最後の審判の弁護人、時には神を励ましたりもした

綾小路  で、俺を殺しに来たっとこれも神のご意思ってやつか

ミカエル 人が先に言おうとしたことを……って、よく分かったな。

綾小路  神学は好きでな、昔いろいろ調べた

ミカエル ふ、分かっているなら話は早い、

神の意思において貴様をこの地上から追放する

綾小路  殺すの間違いだろ

・・・・・・。

ミカエル ちょっとはビビれよぉぉぉぉおおお!!!

綾小路  お前が取り乱してどうする

ミカエル もういい。どちらにしろ貴様に選択の余地はないのだ、覚悟!

 

ミカエルいそいそと鞄からおもちゃの剣を取り出す。

 

ミカエル 神の武器庫から持ち出した神具の力を見よ!!

 

ミカエル剣を振る、綾小路軽く避けおもちゃの剣を取り上げる

 

綾小路  なんだ、これおもちゃか

ミカエル こら返せ!

綾小路 (避け)これってそんなにすごいのか?(ぶんぶん)

ミカエル あわわわ、やめろ!危ないじゃないか

綾小路  そんなに危ないか?(ぶんぶん)

ミカエル やめろ、仮にも神具だぞ、人の使う物じゃない

綾小路  じゃあボシューット(窓の向こうにポイ)

ミカエル ああ、剣が……

綾小路  で、どうするんだ?

ミカエル 剣が……

綾小路  で、どうするんだ?

ミカエル ……いじめだよな……これっていじめだよ……うん、そうだ。あいつらからも面倒な仕事は俺に押し付けてさ……

綾小路  そう(携帯を取り出す)

ミカエル だいたい……なんで俺がラグナロクに出陣して戦わなくちゃいけなかったんだよ……ありゃ卑怯だ……

・・・・・・・。

綾小路 (携帯を操作している)

ミカエル なんかツッコンでくれよぉぉお!!

綾小路  やかましい、ボタン間違えたじゃないか

ミカエル 貴様もか!貴様もなのか!!

綾小路  んなに取り乱すと俺を殺せんぞ

ミカエル 特に貴様、あってまだ少しなのに何でこんなに落ち着いているんだ。

     大体、どういう風に人生送ったらこんなにおかしくなるんだよ。

     ほら今の目、そんな石ころでも見るような目で俺を見るなよ。

     何で貴様なんかが神の意思に逆らうんだよ。神はいいんだぞ、すごいんだぞ

綾小路  あんたが言いたいことは分かる。(携帯かけなおす)

ミカエル そうだろ、そうだろ。近頃変なやつが増えてんだよ。

     天使って言ったら「白衣」とかいう馬鹿者もいたし アレはマジで殺したかった。ほかにも小さい女の子が羽を生やしているならOK、ほかは天使じゃないなんていうんだぞ。天使の幹部はみんな男だっつーのというかそいつロリだろ間違えないロリコンだ。何でそんな、引きこもりまがいのやつにまで存在否定されなきゃいけないんだよ。大体世間でおかしなゲームやアニメがはやるから天使のイメージが偏るんだよ

綾小路  確かに、現代の天使のイメージは偏ってるな。(携帯かけてる)

ミカエル なんでそんなやつらの始末なんかやらなきゃいけないんだよ。こっちは何も知らないんだぞ神の意思とかなんとか言ってるけど、上司が理由を教えてくれないのと同じで俺の神もなんで理由を教えてくれないんだよ

     時々信用無くすよマジで。

綾小路  あ、もしもし大宮?

ミカエル 聞いてるのか!!

綾小路 (無視)ああ、俺死ぬらしいんだ。へ?自殺じゃないよ。なんか天使が来てさ―

ミカエル シカトか、貴様も俺のことなめてんだな

綾小路  なめてない。え?ああ、だからこっちに天使が居てさ、とにかく見たけりゃこっちにこいよ

ミカエル 俺は見世物か?俺の存在意義なんてそんなもんか?

綾小路  そんなわけだから、来るんだったらさっさと来いよ(携帯を切る)

ミカエル まだシカトか、シ・カ・ト

綾小路  で、俺を殺すのか?

ミカエル 貴様、絶対変人って呼ばれてる―――

綾小路  で、俺を殺すのか?

ミカエル ふ、本来の目的だからな。よって貴様をこの世界から追放する

 

ミカエル鞄からいそいそと銃を取り出す。

綾小路付き合ってるのもの面倒なので勉強に戻る

 

ミカエル こっちみろや、こっち。拳銃だぞ、ふふ

     後悔するならするがいい、ただし向こうの世界でな、ふふふ

     そうだな久しぶりに最後の裁判の弁護人になってやってもいいぞ、ふふ、ふふふふふ

綾小路  やめとけ(勉強中)

ミカエル いまさら命乞いしたってもう遅いよ、あひゃ、あひゃひゃひゃひゃ

     どのみち貴様はこの俺の手で殺されるのさ、はーはっはっはっはっは

綾小路  おもちゃの銃じゃ人は死なんぞ(勉強中)

ミカエル そんな言い訳が聞くか追放じゃ追放、むははははははは

 

ミカエル拳銃(おもちゃ)の引き金を引く、もちろん弾は出ない

 

ミカエル な!何で弾が出ないんだよ、あの駄菓子屋の親父め……計ったな!!

綾小路  知ったことか(尚も勉強中)

ミカエル そうさそうさ、いつも俺は……ソウサソウサソウサソウサソウサソウサソウサ

 

大宮が窓からそーっと侵入、手にはさっき捨てた剣

ミカエル全く気がつかない

綾小路はまだ勉強中

 

大宮   隙あり!!(ミカエルを一蹴り)

ミカエル グハッ

大宮   綾小路、あれほど知らない人を家に入れるなって言ったわよね

綾小路  ん?ああ、そうだった

ミカエル この天使軍最高司令官、そしてアークエンジェルの指導者である私を足蹴にするとは貴様もただものじゃないな

大宮   っで。このコスプレ野郎、誰?

ミカエル こ、コスプレ野郎!?

綾小路  自称天使

ミカエル じ、自称!?

大宮   綾小路、天使ってのはこういう男がやるんじゃなくて、かわいい女の子とかやるもんでしょ?

ミカエル 貴様もか?貴様も間違えた偏見の持ち主なのか?

大宮   うるさい!!少しは黙んなさい!!

ミカエル 何だと!この俺に向かってなんて口を―――

大宮   あんた住居不法侵入で警察に突き出すわよ

ミカエル え?け、警察?

綾小路  圧倒的に権力に弱いな

大宮   じゃあ、この奇妙な羽男、警察につき出す?

ミカエル な、羽男だと!!

大宮   どっからどう見てもあんたは羽男、それに尽きるわ

ミカエル なめるな、羽はな…天使はな……

綾小路  くどい

ミカエル うるさい!男に羽、これこそまさに天使の美学だ!!!

・・・・・・。

大宮   まず精神科ね……

綾小路  賛成だ

ミカエル う、貴様ら天使長のこの俺になんてことを

大宮   最近多いのよね、ゲームと現実の区別がつかない子って

ミカエル 俺は正気だ、というか天使だ、アークエンジェルだ

大宮   ……重症ね

ミカエル ええーい、貴様らいい加減にしないとまじめにキレるぞ!

綾小路  すでにキレてるだろ

大宮   こうして見てみるとなんか同情したくなってきたわ

ミカエル うるさい、うるさい。貴様らまとめて追放してやる

 

ミカエル鞄をあさる

綾小路勉強中

 

大宮   綾小路……この人どうする?

綾小路  好きなようにさせればいい

大宮   あんた本当に流れに任せるわね

綾小路  別に

 

ミカエル鞄にめぼしい物がないので大宮の持ってるおもちゃの剣に目をつける

綾小路勉強中

 

ミカエル 女ぁ……その剣をどこで手に入れた……

大宮   女ってずいぶん失礼ね。

私には大宮 灯っていうちゃんとした名前があるのよ

ミカエル 天使を侮辱をするものはそのぐらいで十分だ。

     ……さあその剣をどこで手に入れた

大宮   さっき外に落ちてたのよ。おもちゃじゃないこの剣

ミカエル 神具だ。……その剣は人の使うものじゃない

大宮   へえー、そんなすごいようには見えないけどね(ぶんぶん)

ミカエル あわわわわ、やめろ危ないじゃないか

大宮   そう、じゃあつまらないから返すわ

ミカエル(あっさりしすぎてポカン)……どうも

大宮   それにしてもあんたのこの羽よく出来てるわね。どうやってついてるの?

ミカエル 作り物じゃない、しっかり肩甲骨にくっついている。

大宮   嘘言いなさい!(軽く引っ張ってみる)

ミカエル 痛

大宮   え?今の演技でしょ

ミカエル 引っ張った本人がそんなこと言うのか?

大宮   で、でも……。も、もしかして、本物?

ミカエル さっきから……さっきからそう言ってるだろぉぉぉぉぉおおおおお!!!!(あさっての方向に)

・・・・・・。

大宮   綾小路。……この人どうする?

綾小路  知らん、そいつは俺を殺すらしいが

大宮   え?

綾小路  っで、お前は俺を殺すのか

大宮   ……ホント?こんなコスプレ天使が綾小路を殺しに来た死神なの?

ミカエル 死神じゃない、天使だ

綾小路  っで、お前は俺を殺すのか

ミカエル すべては神の意思だ

大宮   ねえ……本当なの?

綾小路  さっきの電話が冗談だと思ったのか?

大宮   ……嘘、でしょ

綾小路  それを確認するためにお前はここに来たんだろ

大宮   そんな、ただ私は……

綾小路  ただなんだ

大宮   ううん、なんでもないわよ

綾小路  っで、お前は俺を殺すのか?

大宮   ……なんで、綾小路はそんなに落ち着いてるのよ

綾小路  あわてたとこで仕方ないだろ?

大宮   それでも、なんかへンだと思わないの?

綾小路  別に

大宮   ねえ、あんた(ミカエルに)綾小路を殺すのは決定事項なの?

ミカエル ああ、すべては神の意思だ

大宮   あんたの意思じゃないのよね

ミカエル ……ああ

綾小路  そんなことはどうでもいい、俺を殺すのか?殺さないのか?

大宮   そんな簡単に死んでいいの!?

綾小路  殺すかどうだかはそいつが決めることだ

ミカエル そうだな、剣はここにあるからな……よし、あなたの行為に免じてすぐには追放しない。そうだな……一つだけ心残りを片付けてからにしてやろう

大宮   それって……願いを一つ叶えてから殺すってこと?

綾小路  お前はファウストか

ミカエル ファウストか……面白い、さあ貴様の心残りを一つ言ってみろ

     もちろんながら、願いを増やすなんて考えるなよ。

大宮   綾小路、ファウストって何?

綾小路  ……ファウストというのは恐怖の代名詞。

     昔話のある学者と悪魔の話でな、世界のすべてを知りたいと思った学者は自分の魂と引き換えに悪魔と交渉したんだ。世界のすべてを見せてくれ』と、悪魔はその願いを聞き入れ学者に世界のすべてを見せる。そして悪魔は学者の魂を

     奪っていくという話だ

大宮   ほんと……そっくり……

ミカエル さあ言ってみろ、貴様の心残りを一つ言ってみろ

綾小路 (大宮のほうをちらりと確認)そうだな俺の心残りは……

     悪い、大宮少しはずしてくれ

大宮   ……分かったわ、戻ってきたら死んでたなんて事は無いでしょうね

綾小路  大丈夫だ

大宮   そう、じゃあいっぺん外すわよ

 

大宮綾小路の部屋から出て行く

 

ミカエル さあ、何でも言ってくれ

綾小路  そうか、ならちょっと耳かせ

 

綾小路ミカエルに何か話す

 

暗転

 

再び同じ部屋

話し合いが終ったようで、綾小路、ミカエルが座っている

 

ミカエル 会ってまだ間もないが貴様がそんなこと言うとは思わなかったぞ

綾小路  別に

ミカエル アカリ!入っていいぞ

 

大宮入ってくる

 

大宮   イキナリ何?「アカリ」って馴れ馴れしいわよ

ミカエル ふ、そっちが大天使ミカエル様でも呼ぶのなら別の呼び方も考え直してやろう

大宮   長いから嫌。

     ……ねぇ綾小路。

私、思ったんだけどさっさとこの変人から逃げるってのはどう?

綾小路  逃げてどうする

大宮   逃げて、宿舎を見つけて、自由になるの、悪くないと思うわよ

綾小路  ……大宮。本当に自由なんて言葉が存在すると思っているのか?

大宮   え?

綾小路  本当に自由はあると思うのか?

     実際存在するのは自由という名のただ選択肢が大量にある規律に守られたものに過ぎない

大宮   ……綾小路、イキナリ何言ってんのよ

綾小路  なら聞くが、宇宙に行くのにほんの少しの自由時間でいくことが可能か?

     もちろん不可能だ。

     このことからも分かるように、人が出来ることは限られている。

     分かるだろう、この世の中に自由なんて言葉はないんだ。

     正確に言うと自由というのは結局、虚像にしか過ぎない。

ミカエル ……それが貴様の持論なのか?

綾小路  そうだ、この持論を変える気はない

ミカエル 神が危惧するわけだ……

綾小路  何とでも言え

ミカエル さあ、貴様の望みはかなったな

大宮   え?

ミカエル アカリには悪いが彼の望みはたった今、叶った

     よってこの世界から追放する

大宮   綾小路!イキナリどういうことよ

綾小路  ……

ミカエル 彼の心残りは、「自分の考えを誰かに伝えること」だったんだよ。

     もう遅い、(剣を手に取り)彼にはもう選択の余地はないんだ

大宮   綾小路?あんた本当にそれでいいの?

何にも抗わなくてこのまま終っちゃうの?

綾小路  ……ああ

大宮   なんで、なんであんたはいつもすぐに諦めちゃうの

     昔っからの付き合いでいろいろあったけど、あんたすぐに諦めちゃうじゃない

     子供のときからけんかで負けそうになると戦わなくなるし、

     受験勉強だって、目標校に届かないからってやめちゃうし

     この前のレポートだって間に合わないからって出さなかったじゃない

     あれださないと単位危ないのよ

     分かってる?あんた昔から諦めが良すぎるの

綾小路  ああ、よく分かってる

大宮   分かってない!分かってたら何とかするってのが人間でしょ

ミカエル それが出来ないから、私はここに来た、彼には神を冒涜する恐れがある

大宮   何よ、それ。大体キリスト教でもないのに天使なんて来るのがおかしいのよ

ミカエル だまれ!俺はイスラム教にも所属している

大宮   そんなことどうでもいいわ、綾小路、逃げよう

綾小路  大宮、悪いがもう遅いらしい

大宮   何言ってんのよ。こんな雑魚蹴っ飛ばしてさっさっと逃げよ

綾小路  ……悪いな

大宮   あ、綾小路!

ミカエル もう遅い!!

 

ミカエルおもちゃの剣で綾小路を切る

場面は真っ赤に染まる

綾小路、そのまま倒れる

 

ミカエル ……またか。最後の審判の弁護人ぐらいはなってやろう

 

場面の色調が戻る

 

大宮   あ、綾小路!!!(駆け寄る)

綾小路  ……うる、さい

大宮   まだ息がある。急いで救急車――(携帯を取り出す)

ミカエル 無駄だ

大宮   何よ、ほっといて

ミカエル 神具で傷つけられたら、人間ごときの回復力じゃ一生傷はふさがらない

綾小路  ……うる、さ……

大宮   そんな、それじゃあ綾小路は……

ミカエル その通り……もう、生きられない

大宮   ……嘘、嘘よね綾小路

綾小路  ……

大宮   え?あ、綾小路?ねえ、綾小路!!

綾小路  ……

ミカエル 自らがやっておきながらこれをいうのは忍びないが……冥福を祈る

大宮   許さない……

ミカエル 何をだ……

大宮   あんただけは絶対に許さない!!

ミカエル 悪かったな……

・・・・・・。

ミカエル さて、やつの心残りを済ましてやるか

大宮   何言ってんの!綾小路はもう……

 

ミカエル綾小路の鞄をあさる

 

大宮   何やってんの!!触らないでよ!!

ミカエル(無視してあさる)…………あった

 

ミカエル茶封筒を数枚取り出す

 

大宮   いい加減にしなさいよ!!人殺し!!!

ミカエル ……アカリ宛のだ(中から一枚)

大宮   え?

ミカエル そいつは皮肉なことにいつも遺書を持って学校に行っていたんだ。

     それぞれの人に合わせてな(一枚取り出す)こいつは家族宛だな。

何々、今まで育ててくれて感謝するその一点に尽きる

     ……愛想のかけらもないな。(さらにもう一枚)今度のは今居るクラスに宛ててだな。 何々、俺みたいなのが居なくなって清々しただろ、仮に自分を偽って泣くやつなんかいたらたたり殺す……怖。一体何やったんだよクラスで………

大宮   そんなこと……知らないわ

ミカエル アカリのにはなんて書いてあった?

大宮  (封筒から紙を取り出す)

     最愛の親友 大宮 灯様。

基本的に文章が苦手なので内容は支離滅裂になってしまうことを許してほしい。この手紙を読んでいるってことは、俺はもうこの世には居ないのだろう。多分俺のことだからろくでもない終わり方をして。きっと大宮のことだ悲しいのだろう。悪かった、謝っておく。

     初めて大宮と出会ったのは、確か十四年前の幼稚園のころだったよな。俺がいじめられているのを助けたのがきっかけだったんだよな。

     初めは、偽善か何かだと思ったけど、それは違った。あの時は本当にありがとう。それから同じ小学校に入学して同じクラスには四回なったよな一年のときと二年のとき、五年のときと六年のとき。

     そのときも俺はいじめられてた。あの時からだったかな、なんだか周囲がどうでも良くなってきたのは、でもそんな俺を支えてくれたのがやっぱり大宮だった、ありがとう。

     そして、中学校。多分職員が裏で何か手を廻したんだろう、俺を大宮は三年間同じクラスだったな、

     そしていつも大宮は俺を守ってくれた、なんか自分が情けなくなったな、いや気にしないでくれ。

     大宮が守ってくれる代わりに大宮、お前もいじめられてたのか?例にもよって一人で掃除をしていたら、女子達が「大宮さんってむかつくよね」と言っているところを聞いたことがいくつもあった。多分俺のせいなんだろう、悪かった。

     そうして、受験があって俺は志望校を諦めた。親の言いなりにはなりたくなかった。

     高校も同じだったな。大宮は「第一志望が落ちた」なんか言っていたけど本当にそうだったのか?

     こうなっては真相を聞くことは出来ないが、あの勉強量を見る限りだと落ちるようなことはないと思ったが……

     高校になってからもいじめはなくならなかった。大宮にはまた助けてもらった。

     本当に大宮に感謝しなきゃいけないことでいっぱいだ。

     テストのことも……体育祭、文化祭……いつも、大宮は俺を、こんな俺をかばってくれた……

     ありがとうだけじゃすまない気がする。

     なんていえばいいんだろ。

     大宮といる時はいつも楽しかった。

     大宮……………やっぱりこれしか思いつかない……ありがとう。

 

・・・・・・。

 

大宮   馬鹿……。

ミカエル ……アカリ、そいつ、いや綾小路は最後に「心残りはなんだ」と聞いたらなんて答えたと思う?

大宮   わからない

ミカエル 「大宮に記憶を消すかどうか選択させてやってくれ」だとよ。ホントよく調てたよ。綾小路は。

大宮   どういうことよ?

ミカエル 綾小路が調べていた通り、この世界から追放されたやつは、その存在がなくなる、つまり「初めからそんな奴はいなかった」ってことになる。生まれる前から、ちゃちゃっと操作してな。そうするとそいつにかかわっていた奴全員、もちろん親もだ、そいつのことを「初めからそんな奴はいなかった」ってことになる。つまり後始末だな。

大宮   馬鹿……そんなこと

ミカエル さあどうする?こんなつらい記憶でもアカリは記憶したままでいるのか?さあ、選択しろ

・・・・・・・。

大宮   ……私は……忘、れない……忘れたくない!!

ミカエル そうか。ならアカリの記憶はそのままにしておこう、それじゃあ綾小路は連れて行く

 

一度暗転してすぐに戻す

その間に綾小路が舞台から消える

 

大宮   ねえ、綾小路の願いをかなえたのは貴方の意思なの?

ミカエル ……ああ

大宮   あのさ、それって―――

ミカエル 私は神を冒涜した、本来やってはいけないことなのも知っている。

大宮   ……そんなことやってもいいの?

ミカエル 俺の神はな、昔、堕天した天使たちと戦争をしたんだ……

     我々天使軍はもと同僚と戦うことになった、俺はそのときから天使軍の司令官をやっていた。そして、最後の決闘、両軍の司令官が一騎打ちをすることになったんだ。

     その司令官は……俺の双子の弟だった……

     俺はこの剣で……………弟を切った。

     天使の回復力だったら死ぬことはないはずだが……それでも、俺に渦巻いた感情は何にも言い難い物だった

     あとで、俺は神に訪ねた。「彼方は私の弟が敵の司令官だったことを知っていたのですか?」ってな

     神は結局何も答えなかった……そろそろ信用無くしたとこだ、いい加減愛想もつきた。

大宮   それでも……

ミカエル 言い逃げするようで悪いがそろそろ俺は天界に帰らなければいけない

大宮   え?ちょっとま――――

ミカエル アカリ、辛いかもしれないが、強く生きろ

 

一度暗転してすぐに戻す

その間にミカエルは舞台から消える

大宮しばらく呆然としている

・・・・・・。

・・・・・。

・・・・。

大宮   綾小路……私、諦めないよ。

     どんなに苦しくったって、あんたみたいに逃げないから

     絶対、絶対に逃げないわよ!!!

     ……はは、あははははは……あははははは、もう、大丈夫。

     しかしあんた、人の心配する前に自分の心配しなさいよ

     ……綾小路……あんたのブンまで私は生きるよ

 

暗転

 

ミカエルと綾小路がスポットが当たる

(綾小路ちゃんと動ける)

 

ミカエル 綾小路、お前の心残り「彼女に自分の存在を忘れさせない」ことは完了したぞ

綾小路  悪かったな手間掛けさせて

ミカエル まあ、いいさ。おかげでこっちも久々に反抗できたしな

綾小路  そんな神を冒涜するようなことここで言っていいのか

ミカエル 気にするな

綾小路  ならいい

ミカエル さあ、最後の法廷が始まるぞ、俺は先に言っているからな

ミカエルのスポットが消える

少し間

 

綾小路  ……今を生きることに意味があると思うか?

     少し考えてくれ、息をするだけで二酸化炭素は増え、紙を使うたびに木が無くなる。

     人間が生きるための犠牲は大きいものだ。今の生活の下には何億という死体が眠っている。

     そこで仮にも生きることだけに意味があるという奴は大馬鹿者だ。

     意味を見つけるからこそ、生きることになるのではないか?

     少し考えてくれ、生きるということを。

     生きるために犠牲を増やし。

     死に逝く為に犠牲を増やし。

     犠牲を減らす為に犠牲を増やす。

     人間とはそういう生物なのだから……

 

綾小路のスポットスポットが消え、幕が掛る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

制作誤記2016/06/12

というわけで揚村 甜記です(どういうわけだよ)タイトルの制作後記の字が違っているのはやや使用ということで今回もお楽しみのネタ明かしをどうぞ(なんだこの恒例コーナーのノリは)

 

制作時間

なんと四日!「すごい」というか「馬鹿」? 勢いで書いたので誰も割と報われぬエンドです。

名前

みんな、なんか神っぽい感じで名前をつけました

綾小路 清明…なんと言うか昔っぽく寺っぽくをもっというつけた名前なんです当初の

予定では「水前寺」という案もあったんですけどなんかそうすると「おっ

くれってる――(以下略)――」という言葉がどうしてもほしくなっちゃ

うので却下(読んだことのある小説のキャラです)しました。下は阿部○○から

大宮 灯……なんとなくその場の勢いで神社っぽく

ミカエル……まんまアークエンジェルのトップより

 

終わり方について

すまない殺す気は無かったんだ。ただなんかその場の雰囲気が……彼には謝罪しますマジで…

 

あとがき

「男に羽、これぞまさに天使の美学!」この科白を思いついたときはどうしようかと思いました。

まずは出すとしたら天使ですね。次に舞台は移動しないということを考えました。そうして綾小路を考え、最後に大宮です。後は彼らに勝手にやってもらいました。ちなみに大宮は初めて「~だよ」をなしでまたは幼くさせないでかいてみました。(なんか科白がぎこちなかった気がする。)

さってそんな不順な理由で始めた今作ですがテーマは最後の最後になっていつの間にか決まっていました「生きることの意味」です。考えてください、

そして唸ってください。

そしてお逝きなさい!

 

すみません取り乱しました。とにかく正月前にこの作品をかけて嬉しい限りです。反省としては後半の勢いが弱くなっちゃったことですかなね。というか弱すぎ。本題に入るまでも引っ張りすぎています。(いたたたた)

それと綾小路の遺書、長すぎ!というか文になってねー。……もう少し鍛錬します。

調べてみて分かったんですけど大天使って男ばっかなんですね間違った偏見を持った方ミカエル様が光臨するんで早く訂正しなさい。

さて物凄く余談ですが私が書く話はいつも苅田で起こっている話しです旧名は風見町なんですけどね。なんとなくですが世界観が固まっていたりします。でわでわ